ふくい吃音のつどいで寄せられた質問と回答①

去る10月21日に開催されましたふくい吃音のつどいでは多数のご出席をいただきありがとうございました。

当日参加者にお配りしましたアンケートにおいて坂田善政氏による講演内容についての質問を募集したところ、3件の問い合わせがありましたのでその質問と坂田氏による回答を公表いたします(3件とも別々に掲載しています)。

 

Q いわゆる発達障害(高機能自閉症、ADHDといわれるもの)と吃音には因果関係はあるのか?併発してしまうことの確率は高いのか?

 (※コミュニケーションに吃音があるうえ、いわゆる場の空気が読めないのでひどい目にあったことがあった)

 

 

「専門機関に吃音を主訴として相談に訪れる子どもたちの中に、一般人口にみられるよりも多く発達障害のあるお子さんがいた」という結果を出している調査があります。ただ、発達障害のない吃音のお子さんや、吃音のない発達障害のお子さんが多数派であることを考えれば、両者に明確な因果関係がないことは明らかでしょう。


  また、このような調査結果を解釈する上で重要なのは、調査が「専門機関に吃音を主訴として相談に訪れた」子どもたちのみを対象にしているという点です。吃音があっても相談機関を訪れない子どもたちは数多くいます。専門機関に相談に訪れる子どもたちは、吃音を主訴としているものの、実際には吃音以外にも困っていることがあるがために相談機関を訪れたということも少なくありません。このようなことを考慮すれば、吃音のある子どもに発達障害の合併が多いのかどうかも実際には明らかではありません。


  ただし、発達障害のあるお子さんの方がないお子さんよりも、一般に多くの困難に直面しやすいことは確かでしょう。環境からのストレスが、吃音の根本的な原因ではないとしても吃音の発症に誘因として作用したり、吃症状を悪化させたりすることは有り得ます。発達障害の特性について理解のない環境で育ったお子さんがいたとして、このお子さんが吃音になりやすい体質があった場合に、このような環境によってもたらされたストレスが引き金となって吃音を発症、悪化させることがあっても不思議ではないと考えます。


  吃音のあるお子さんが発達障害を合併していた場合には、その発達障害による特性を周囲が理解し、発達障害と環境との相互作用によって引き起こされるストレスが可能な限り小さくなるよう環境調整に優先的に取り組むことが臨床上重要です。