ふくい吃音のつどいで寄せられた質問と回答②

Q 子供(3歳)に少し吃音症があるが親としてことばの発達をどのように支援・アプローチすると効果的でしょうか?

 

A 

吃音のある幼児期の子どもを支援する場合の原則は、「できるだけ多く流暢に話せる経験をさせること」です。そのために多くの場合、まず「吃音が生じにくい」、「流暢に話す力の発達を促進しやすい」環境づくり(環境調整)が行われます。


  この環境づくり(環境調整)を行う上で理解しておくべきことは、吃音のあるお子さんのご家庭の大多数が「普通の環境である」ということです。決して「悪い環境」なのではありません。環境調整は「悪い環境を普通にする」ために行われるのではなく、「普通の環境を、治療的に特別素晴らしい環境にする」ことを意図して行われるものです。


  環境調整のポイントはお子さん、ご家庭によって変わってきます。言語療法として環境調整を行う場合には、保護者に家庭での日々の吃音の状態を記録してもらい、症状の変動を観察する中で、お子さんの吃症状を誘発しやすい条件を特定し、そのような条件を可能な限り取り除いていきます。逆に、お子さんの吃症状を抑制しやすい条件も併せて特定し、そのような条件を可能な限り増やしていきます。


  多くのご家庭で共通して目標となるのは、①お子さんの情緒が安定する環境、②お子さんが自分のペースで話したり行動したりできる「ゆったりとした環境」、③お子さんが自分の感情や気持ちを臆することなく出せる環境、です。そのために、次のようなことがよく行われます。(a)お子さんの情緒的な甘えをしっかりと満たしてあげる、(b)大人の側の話す速さはもちろんのこと、生活のリズムそのものをゆったりしたものにしていく、(c)しつけの要求水準を下げ(叱るのは、命に関わったり大怪我につながるような場合のみとする)子どもが伸び伸び過ごせるようにする。


  ただし、「治療的に特別素晴らしい環境」が整えられれば、必ず子どもの吃音がすぐに改善するかというと、そうではありません。改善が一直線に進むことはまれで、多くの場合調子が良かったり悪かったりを繰り返しながら、徐々に改善していきます。そのため、このような望ましい環境を整えた後には、子どもさんの「流暢に話す力の成熟」を気長に待ってあげる必要があります。


  このような環境づくりを行って経過を観察しても改善がみられない場合や、お子さん自身が自分の吃音に気づき困っているような場合には、必要に応じて直接的な言語療法も行っていきます。ただ、直接的な言語療法は専門家の指導のもとで行う必要がありますので、そのような場合にはお住まいの都道府県の言語聴覚士会や日本言語聴覚士協会にお問い合わせいただき、近隣の専門機関を紹介してもらい、その機関に相談されることをお勧めします。